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「ドルビー・アトモス」を聴いてみよう!

最近話題になっている「Dolby Atmos(ドルビー・アトモス)」とはどんなものか。前回は、ユニバーサル ミュージックのスタジオ&アーカイヴ部から高木・山田の2名に話を聞きながらご紹介しました。

ドルビー・アトモスの効果を最大限に楽しむには、最低8つのスピーカーが必要だということ。一般家庭では、ハードルが高いですよね。ご自宅にサウンドバーがあればある程度再現できるようなのですが、それも機材の用意が必要。もっと手軽に楽しむことはできないのでしょうか?

イヤホンで手軽にできるドルビー・アトモス体験

家にオーディオの設備がなくても、イヤホンやヘッドフォンを使うことでドルビー・アトモスを楽しむことができるのです。イヤホンでドルビー・アトモスを聴くと、これまでと聞こえ方がどう違うのでしょう。

山田「通常のステレオ・ミックスだと、右イヤホンと左イヤホンの間しか音が鳴りません。なので、頭の中で音が鳴っているように聞こえます。でも、アトモス・ミックスの音源をイヤホンで聴くと、音が自分の周りを取り囲んでいるように聞こえるんです。目の錯覚で立体に見える絵がありますよね? そういうのに近い技術で、耳の錯覚で立体的に聞かせるワザがあるんです」

錯覚といっても侮るなかれ。山田いわくステレオ・ミックスの音源とはまったく違って、「これまで頭の中でこじんまりと鳴っていた音が外側から聞こえて、イヤホンでも空間の広がりを感じることができる」というから不思議です。

ちなみに、Apple Musicはアトモス・サウンドを楽しむために「空間オーディオ対応イヤホン」を販売していますが、通常のイヤホンでもアトモス・サウンドを楽しめます。Apple Musicのアプリに「ドルビー・アトモスを常にON」という設定があり、そうすることで通常のイヤホンでもドルビー・アトモスを楽しめるのです。

となると、早速、聴いてみたくなりませんか?

そこでユニバーサル ミュージックのスタジオ・エンジニア・チームが、ドルビー・アトモスの魅力を味わえる曲を様々なジャンルから選曲。その聴きどころを以下に紹介させて頂きました。ぜひ、世界が注目している新しいサウンドを試してみてください!

ドルビー・アトモスの魅力を味わえる楽曲集

■ ドナルド・バード/Ghana
1960年にリリースされた音源のDolby Atmos化。トランペットのドナルド・バードと、対峙するアルト・サックス ジャッキー・マクリーンの位置関係がより明確かつクリアになり、ドラム、ベース、ピアノの音像もはっきりして解像度が上がったように聴こえます。こんなに古い音源でもDolby Atmos化によって新たな感動や発見を楽しむことができる一例です。

■ ビリー・アイリッシュ/No Time To Die
大ヒット映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の主題歌。イントロの静かなピアノを追尾する這うようなシンセ、遠くで鳴り響くトランペット、耳元で囁くコーラス、そして足元から徐々に昇華していくオーケストラ。ビリーの愁いを帯びたボーカルと相まって、その緊迫感と抑揚感に鳥肌が立ちました。映画を観てなくても、その世界観に身を浸した気分になれる珠玉の一曲です。

■ ザ・ローリング・ストーンズ/ミス・ユー
1978年にリリースされたザ・ローリング・ストーンズを代表する一曲。ドラムのチャーリーとベースのビルによるリズム隊が真ん中にどっしり構え、ステレオでは左右に分かれてしか聴こえなかったキースとロンのギターが、Dolby Atmosによってミックを囲むように生まれ変わりました。楽器の位置だけじゃなくそれぞれの音がよりクリアになり、レコーディング中のメンバーの立ち位置や動きまで目に浮かんでくるような傑作です。

■Tiesto and Sevenn/BOOM
「Dolby Atmos で出来ることを全部やってみました!」的なギミック満載の楽曲。前後左右上下と目まぐるしく現れるサウンド、渦を巻きながら上昇していくボイス。イントロから目(耳)を奪われ、これでもかと言わんばかりの展開は圧巻の一言。作り手の緻密さとスキルの高さが窺える一曲です。ぜひ爆音でどうぞ!

■BTS/Butter
センターに位置するメインボーカルと、包み込みようなコーラス、スケール広がるサビへの展開と、どこをとっても絶妙な空間バランスでDolby Atmos化されており、楽曲の持つ心地いいグルーヴと思わず踊りだしたくなるような躍動感をDolby Atmosがさらに際立たせています。さすがBTS!

■ サイトウ・キネン・オーケストラ, シャルル・デュトワ/海(第1曲: 海の夜明けから正午まで)※特に3:50~4:30あたりにご注目
あたかも指揮者の真後ろで聴いているような臨場感。ホールの大きさ、天井の高さまでも感じられる空間表現。それを大げさではなく、素晴らしい演奏の隅々までありのままをリスナーに届けたい、という想いが感じられます。クラシック・ファンはもちろん、オーケストラに興味がない人にもぜひ体感してほしい作品です。

以上となります。いかがでしたでしょうか。
ドルビー・アトモスの素晴らしさを少しでも感じていただけたのなら幸いです。

これらといくつかの曲を加えたドルビー・アトモスの効果が分かりやすい曲のプレイリストがDigsterで公開されています。よろしければ合わせてお楽しみください。

[ Text by 村尾泰郎 / 楽曲解説 by ユニバーサル ミュージック 高木 ]
[ Photo by 杉浦 弘樹 foto.Inc ]

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