【社員インタビュー】楽曲の権利を守り、作家の創作活動を支える
音楽出版社というと「楽譜を出版しているの?」と思っている人も多いかもしれません。
実はもっと広い役割を担っていて、作曲家や作詞家とともに楽曲を作ってアーティストに売り込んだり、楽曲の音楽著作権を管理したりしています。
ユニバーサル ミュージック グループの音楽出版社「ユニバーサル・ミュージック・パブリッシング合同会社(以下、ユニバーサル ミュージック パブリッシング」で、数万曲におよぶ楽曲の音楽著作権を管理している伊藤洋介に、仕事の醍醐味ややりがいを聞きました。
守りの「管理」と攻めの「制作」
CDを購入したり、ダウンロードしたりしなくても、サブスクリプション型のストリーミングサービスや動画サイトでも音楽を楽しめるようになりました。
楽曲を無料で楽しめるような感覚を持ってしまうかもしれませんが、それでは、作曲家や作詞家(以下、作家)は生活ができなくなってしまいます。
デジタルサービスの仕組みの中でも、楽曲の音楽著作権は守られ、使用料が作家に分配されています。
その音楽著作権を作家に代わって管理しているのが、音楽出版社です。
楽曲のライセンスが利用されるときの窓口となって契約を代行し、著作権管理事業者(JASRACやNexToneなど)から受け取った著作権使用料を作家に分配しています。作家は、そうした煩雑な手続きを音楽出版社に預けることで、創作活動に専念することができます。
伊藤「音楽出版社の仕事は、作家さんが創作した音楽をお金に変えること。僕自身が音楽に救われてきたので、一曲でも多くの楽曲を生み出すお手伝いをしたいと思ってこの仕事を選びました。例えば、作家さんが生活のためにアルバイトをしていて、なかなかスタジオに入れないと、その分楽曲を生み出すための時間が減ってしまう。創作に専念できるように、作家さんの権利を守りきちんと使用料を分配することが必要なんです。自ら音楽を作る才能はなくても、このような形で音楽に携われることにやりがいを感じています。」
音楽著作権の管理が「守り」の仕事なら、音楽出版社にはもう一つ、「攻め」の仕事もあります。
それが、新たな楽曲を生み出す「制作」の仕事。
作詞家や作曲家とチームを組んで、新たな楽曲を生み出し、世の中に送り出しています。また、管理している楽曲の利用開発なども行っています。
伊藤「制作部門の仕事は、国内外の作曲家や作詞家などクリエイターとチームを組んで楽曲を作り、楽曲のコンペへの参加や、音楽会社やアーティストの所属事務所、時にはアーティスト本人に直接売り込んだりしています。常にストック楽曲を持っていて、楽曲ができてから数年後に採用されレコーディングされることもありますよ。楽曲制作のタイミングで作家と寄り添って作業することが多く、管理の仕事とあわせて音楽出版社の事業を両輪で支えています。制作した楽曲の音楽著作権を当社が管理することもありますし音楽出版社にとっては、管理楽曲数を増やすことで、ビジネスを拡大することにつながります」
作家の意向をなるべく反映できるように
伊藤は、歌謡曲からポップスまで邦楽全般の管理を担当しています。
旬のヒット曲には、毎日のように「CMで使いたい」「YouTubeで使いたい」「アレンジして演奏したい」など、ありとあらゆる問い合わせが届きます。それらに対し、作家の意向を確認してから許諾を出しています。
伊藤「一昔前は、楽曲を替え歌にしたいという依頼など作家さんの許諾が下りないことも珍しくありませんでした。私たちもどちらかというと楽曲を『守る』という立ち位置で仕事をしていました。しかし現在は、音楽の楽しみ方、作家さんの感覚も変化していて、特に若い作家さんは利用に関してオープンな方も多く、二つ返事でOKが出ることも少なくありません。作家さんの意向を踏まえて『適切に使う』という考え方に変わりつつありますね。」
国境を越える楽曲と権利
音楽著作権の管理の仕事は、世界が相手。SNSの普及やストリーミングサービスの浸透により、日本の楽曲が海外でも聴かれることが増えている今、楽曲が国境を越えても、作家の権利は守らなければなりません。
ユニバーサル・ミュージック・パブリッシングは、世界中に約50のオフィスがあるグローバル企業としての強みを生かし、海外における交渉もワンストップで行っています。また、他の国内の音楽出版社から、楽曲が海外で使用される際の管理なども行っています。
伊藤「国内では自動的に楽曲の使用料が入ってくる仕組みがある程度確立していますが、海外では権利によっては音楽出版社の我々が直接使用料を徴収しにいかなければならないケースもあるので、責任重大です」
楽曲の利用開発においても、それぞれのオフィスが現地の映画制作会社やCMの代理店とつながりを持っているため、楽曲をより多くの人に聴いてもらえるチャンスがあります。
伊藤「1社で全世界を網羅している音楽出版社は、多くはありません。この会社で仕事ができることに幸せを感じています」
大切な楽曲の権利を預かる責任と自負
国内外には、たくさんの音楽出版社があります。作家から、大切な楽曲の管理委託先として選択してもらうためには、信頼関係が欠かせません。
伊藤「作家さんが音楽出版社に期待することはさまざまですが、最も大切なベースは、作家さんと丁寧なコミュニケーションができているかどうか。加えて利用者や作家さんが、それぞれ何をどこまで求めているかどうかを正確に把握することも大切です。当たり前だと思われるかもしれませんが、一つ一つケースは異なり、思い込みは通用しません。専門知識が必要なことは言うまでもありませんが、コミュニケーションの積み重ねが、信頼の確保につながっていると思います。また、法律やルールが変わることもありますし、誤解を生んでトラブルにならないよう、メールの文面ひとつにしても細心の注意を払っています」
1曲でも多く、1円でも多く
伊藤「個人的に音楽とテクノロジーには密接な関係があると思っていて、音楽著作権の管理方法もテクノロジーの進化によって潮目が変わっています。今後は、音源のマスターデータに著作権情報を埋め込むことも可能になるかもしれません。より適切な管理方法を確立できるような取り組みにも加わってみたいですね。個人的には、『1曲でも多くの楽曲を世の中に送り出すお手伝いとして、1円でも多く音楽で稼ぐ』というポリシーを大切に、真摯に作家さんと向き合っていきます」
作品の数だけ、作家の思いがあり、守られるべき権利がある。
音楽出版社は、1曲でも多くの楽曲を世に送り出すために作家の創作活動を制作部門・管理部門の両軸でサポートしています。
[ Photo by 杉浦 弘樹 foto.Inc ]
ユニバーサル ミュージック パブリッシング合同会社
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