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アーティストとレーベルのインターン──ふたつの顔で音楽業界に向き合う大学生

ユニバーサル ミュージックのインターンとして音楽ビジネスを学ぶ大学生の渡邉。実は、日本のインディーズHipHopシーンで「BBY NABE」名義で活躍するアーティストでもあります。ふたつの顔を持ち合わせるからこそ得たユニバーサル ミュージックでの気づきとは?音楽活動への想いと共に迫っていきます。

※2022年7月talentbook掲載記事

憧れと遊び心に突き動かされてはじめた音楽活動

渡邉が音楽をはじめたきっかけは、ニューヨークを拠点に活躍する日系アメリカ人ラッパーMIYACHIのとあるMVでした。

アメリカのヒップホップグループ「Migos」の有名曲をリミックスした『BAD&ブジ (MIGOS REMIX) 』。そのMVの舞台は、渡邉が12才になるまで過ごしたニューヨークの街並みを切り取っていたのです。

渡邉 「まさに自分が毎朝学校へ行くために通っていた道がロケ地でした。それだけでなく日本語と英語を交えた彼の楽曲そのものにも強い親近感を覚えたんです。自分もこんな格好いいことをやってみたいと思いました。その勢いのままスマートフォンとイヤフォンのマイクだけを使って音楽活動をはじめたんです」

最初はYouTube上で公開されている歌詞の無い楽曲に合わせて、自ら書き上げたリリックを歌ったラップがほとんどでした。その後、「サウンドクラウド」(音声ファイル共有サービス)を使って楽曲を発表すると、次第にアーティスト同士のつながりが広がっていったといいます。

BBY NABE - anymore (Official Music Video)

渡邉 「SNSなどを通じてどんどん音楽友達が増えていき、自分の作品をストリーミングサービスでも配信をするようになりました。音楽をはじめて数カ月経って、はじめて収益を得ることができました」

本格的に活動をはじめてからわずか数カ月でファンを獲得するまでに至った渡邉は、幼い頃からピアノを習ったりキリスト教徒の母の影響で教会の聖歌隊へ入り歌に親しんだりする一方、学校では詩作の授業で“書く楽しさ”に気づいていたといいます。

渡邉 「収益を得られるようにはなりましたが、自分にとって音楽活動は楽しんでやっています。歌詞の執筆依頼などを受けることもあり、もちろんそちらは仕事として真面目に取り組んでいますが、自分の曲作りは基本的に遊び心に支えられています」

渡邉にとっては、まだまだ自分の音楽のスタイルを楽しみながら探しているフェーズ。アーティストとしての未来は無限に開かれているのです。

レーベルに飛び込み音楽ビジネスを学ぶ

大学生となった渡邉は一層音楽にのめり込んでいきました。その後、コロナ禍となったため、オンラインで授業を受ける合間に曲を作るなどして、1日1曲ペースで毎日制作していた時期もあったそう。

渡邉 「毎日ずっと音楽のことを考えていました。ただ、あまりに音楽漬けになると自分の性格上どうしてもそれだけしか考えられなくなってしまうんです。音楽をやりながら学校へ行ったりアルバイトをしたりバランスを取ることの大切さも学びましたね」

そんなときに知ったのがユニバーサル ミュージックのインターン制度でした。

渡邉 「自身の『PINK SWEET』という楽曲をきっかけにユニバーサル ミュージックのアーティスト担当者と話す機会がありました。そこで、ユニバーサル ミュージックとのつながりができたことをきっかけに、学生としてのインターンシップに強い興味を持ちました」

渡邉は、もともと音楽レーベルへの就職を希望していたといいます。

渡邉 「海外のラッパーには自分で音楽制作をしながらレーベルを立ち上げる人もいるんです。自分も音楽でできることの幅を広げたいと思っていたので、レーベルのインターンなら音楽業界のことや、音楽ビジネスのことを一から学べるのではないかと思ったんです」

2021年8月、渡邉は正式にユニバーサル ミュージックのインターンプログラムに参加。ストリーミングサービスのマーケティング戦略を担います。最初に取り組んだのは最新ヒットチャートでトップ入りを果たしている楽曲の分析することでした。

アーティストの曲を出すペースやSNSでの活動や楽曲がどのようにして話題になったのかなどをリサーチしています。その際、自身がインディーズのアーティストだからこそ得られた気づきも少なくないといいます。

渡邉 「インディーズアーティストの手法と思われてきた楽曲提供方法を積極的に活用するメジャーアーティストも増えてきています。サウンドクラウドをうまく利用して楽曲を発表している世界的に有名なアーティストも複数いますね」

アーティストから見たメジャーレーベルの強み

インターンとして入るまで、渡邉はメジャーレーベルに対してある種の誤解を持っていたといいます。

渡邉 「メジャーの強みは大規模にプロジェクトを動かせること。そもそも、規模の大きなアートを実現したいというアーティストにとっては良い環境で自分のようにマイペースにやりたい音楽をやっていきたいというアーティストにとっては合わないと思っていたんです」

しかし、実際にレーベルの中に入ったことで、大きなプロジェクトとマイペースなアーティストのかけ合わせの可能性を感じました。

渡邉 「大事なのは自分の音楽のスタイルを持つことなんです。スタイルさえ確立していれば、メジャーでも自分なりの表現ができる。かえって大勢のプロに助けられるからこそ実現できることも増えます。ただし、アーティストとしてのスタイルを持たないままで楽曲を出しても“Industry Plant(インダストリープラント)”と見なされかねません」

“インダストリープラント”とは、計画的にヒットした楽曲や、マーケティングに頼って売れたアーティストなどを指す言葉で、ときにマイナスのイメージとともに使われます。

渡邉はレーベルの中に入ったことで、音楽におけるマーケティングの価値を学びました。そしてマーケティングの力とバランスを取れるだけの強いスタイルが、ヒットを飛ばすアーティストに備わっていることを知ったのです。

渡邉 「中に入ってみて強く感じるのは、世界中の音楽を扱っているレーベルだからこそ、ものすごく小さな個性も大切にして育てていこうという意志でした。アーティスト一人ひとりの人柄を見てマーケティングを考えている。そのやりがいをより深く学んでいきたいと思います」

「好きな音楽で生きていく」をもっと簡単に

インターンとして音楽ビジネスへの知見を広げつつある渡邉ですが、自身の音楽活動に今は大きな目標を持たずにそのときの自分の気持ちを大切にした創作活動を続けています。

渡邉 「たとえばバラードの曲を作りたいと思ったら、それを作りきるところまでが目標です。リリースするかしないかは別の話。ただ、そうした小さなことを積み重ねていくことが楽しいし、それによって得られる新しいチャレンジもあるんです」

小さな積み重ねのひとつとして、まさにユニバーサル ミュージックでのインターンがありました。レーベルスタッフとして音楽業界と向き合ったことで、自分の音楽との向き合い方をレーベル側からさらに広げていける可能性を見出しています。

渡邉 「僕のように、アーティスト全員が音楽でお金持ちになりたいと願っているわけではありません。ただ単に音楽を楽しんでいる人たちも大勢います。好きな音楽で最低限の生活ができるようにするための音楽にひたむきなインディーズアーティストをサポートするシステムを作っていけないかと思っています」

アーティストだけでなく、レーベルスタッフとしての顔を持つようになった渡邉には、これまでなかった大きな目標が少しずつ見えはじめているのかもしれません。

( Text by PR Table / Photo by 杉浦 弘樹 foto.Inc )

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