【社員インタビュー】人とのつながりから感動を生み出すA&Rの一週間に密着
所属アーティストの楽曲制作のディレクションから、新人アーティストの発掘・契約までを担う職種であるA&R。A&Rは楽曲制作からリリース、時にはライブなどアーティストの様々な音楽活動を支えています。実際にどのような仕事を、どのようなスケジュールで進めているのでしょうか。
ユニバーサル ミュージック内の邦楽レーベル・EMI RecordsのA&R小野のとある一週間をご紹介します。
■ プロフィール
小野 賢太
制作&プランニング本部 制作&プランニング1部 Artist Division.E
2017年に新卒で入社。A&Rとして複数のアーティストを担当する。楽曲の制作からリリースまで、全体の制作進行管理をはじめ新人アーティストの発掘や契約、育成などを行う。
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私の一週間のお仕事紹介
▼月曜日
レーベル全体会議
所属部門/EMI Recordsのスタッフ全員が出席する会議に参加します。この日は、所属アーティストの直近の状況を共有し、売り上げ目標の確認やレーベル年間予算達成状況についての確認、その他業務連絡などを中心とした会議でした。
Division内でのデジタル分析会議
EMI Records内でも各業務や担当アーティスト別にいくつかのDivisionと呼ばれるチームに分かれています。Divisionのデジタル分析会議に出席し、それぞれの担当アーティスト、他社のアーティストがチャートやSNS上でどのような動きがあるかを分析しました。どんなプロモーション施策を展開すればどんな効果が生まれるのか、最新のトレンドとともに探っています。
SNSチェック
ちょっとした空き時間は、SNSチェックに充てることも多いです。かつてはライブハウスなどに探しに行ったり、送られてくるデモ音源からアーティストを発掘しデビューするアーティストが多かったのですが、最近はSNSきっかけのデビューも増えています。私自身も新人発掘にSNSをよく使っており、アーティストがどのような魅力や個性を持っているかを注視しています。
新人アーティストと対面で打ち合わせ
SNS経由で見つけたアーティストにコンタクトをとり、実際にお会いし、対面で打ち合わせを行います。直接会うことで、どういった感性や生き方が音楽活動に繋がっているのかを知るきっかけになるため、初めての打ち合わせでは、可能な限り直接会うことを心がけています。
▼火曜日
新人発掘に関する社内会議
新人発掘状況について情報共有を行う会議をレーベル内で開催しています。各A&Rがコンタクトをとっているアーティストのリストアップ、それを踏まえたディスカッションや音楽シーン全体のトレンドについてのミーティングを行います。
普段ご飯に行かない同僚とランチ
A&Rを担当する上で、情報収集がとても大切だと考えています。情報交換をすることで、プロモーションの可能性やクリエイティブのアイデアが広がることも少なくありません。そのため、ランチは仲が良い同僚と行くこともあれば、あえて普段あまり仕事の接点のない方と行くこともあります。
担当アーティストAのライブ
パフォーマンス、グッズの売り上げ、ファン層のリサーチなど、今後の制作に落とし込むために、ライブ現場に立ち会うことも大切な仕事です。また、合間を縫って今後のリリースや制作物、プロモーションに関して、マネジメントやアーティストとの打ち合わせを行うこともあります。
アーティストの限られた時間の中で、効率よく確認を進められるような工夫も必要です。ライブ終了後は打ち上げに参加することもあります。
▼水曜日
担当アーティストBのレコーディング
前日とは異なるアーティストのレコーディングに立ち会います。
ベストパフォーマンスでレコーディングができるように、アーティストが集中できるための環境を整えることも大切な仕事です。
また、A&Rとして、気がついた客観的な意見を現場で伝えることでチーム全体で作り上げる、妥協のない制作を心がけています。
担当アーティストCのリリースに合わせて告知内容を整理
楽曲リリース情報の解禁に向けて、告知内容を整理します。
SNSによる解禁の瞬間も見届け、その後にアーティスト自身が行うSNSのライブ配信などもチェックします。
担当アーティストのリリースが重なると業務も増えることになるので、事故等がないようにさらに細心の注意をしながら確認を行います。
▼木曜日
担当アーティストAのMV(ミュージックビデオ)撮影
この日は、終日MV(ミュージックビデオ)の撮影。朝早くからスタートする場合も多く、演者(アーティストやキャスト)の入り時間やシーンごとの撮影時間などといった1日の流れを細かく記した香盤表をもとに予定通り事故なく進んでいるか、などを細かく現場で確認、調整を行います。
アーティストを含め、MVの監督や映像プロデューサーと事前に細かく打ち合わせで詰めた企画内容と撮影内容にズレがないかもチェックしていきます。
大変ではあるものの、作り上げた音源を映像とともに伝えられる、そんなMVを作り上げる“現場”の空気感を味わうことができる、とてもやりがいのある仕事の一つです。
▼金曜日
フレックス出社
前日の撮影で、夜遅くまで稼働していたので、フルフレックス制度を活用し、午後から働き始めます。
ライブやスタジオ業務をはじめとした、時間的に不規則な業務も多いので、会社の制度を効率的に活用し、勤務時間を自ら調整しています。
担当アーティストBのマネジメント事務所、そして社内メンバーと打ち合わせ
制作のディレクションはA&Rが行う一方で、メディア露出などの方針はMP(マーケティングプランナー)を中心に行っています。
チームで詰めたプロモーションプランなどをマネージャーと確認し、打ち合わせ内容を社内に共有することで、本格的なプロモーションの仕込みに動いていきます。
制作の担当として、アーティストの楽曲にかけた思いとプロモーションの動きにズレのないように、全体を見通して、必要に応じて会議に参加します。
定時に退勤して業界同期とご飯
同業で働く他のレコード会社の同期とご飯に行き、会社の垣根を越えてコミュニケーションを図ります。こうした時間に紹介してもらったクリエイターに制作を発注するようなことも多々あるため、大切な時間です。
▼週末
インプットの時間
ライブやイベントなどがあり、休日に仕事をすることもあればオフを満喫する休日もあります。
何もない時は一人で映画鑑賞に行ったり、友人とご飯を食べたり、家族と出かけたり、気ままに過ごしています。
オフの過ごし方によるインプットが思わぬアイデアに繋がることもあるため、しっかりと休むことも大事な時間として過ごすようにしています。
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がむしゃらになれる、心から面白がれる仕事
自らの仕事、忙しくもありながら充実した日々について、小野は「部活で全国大会、世界大会を目指して頑張っている感覚に近い」と語ります。
小野「作品を世の中に届けること、音楽業界の未来を担う新人アーティストを探すことはマニュアルや正解がない分、日常的なインプットや、業務内外問わず、さまざまな経験をもとにした自分なりのベストを導き出す必要があり、その積み重ねが良い結果につながると信じています。街で自分が制作に携わった楽曲を耳にしたり、SNSでリスナーの良い反応を見かけた時は、頑張ってよかったと心から感じますね」
そんな努力の原動力となっているのは、「人が好き」という自らの好奇心です。
小野「アーティストと話していると、その人ならではの感性や個性がわかって、こういう人だからこういう音楽が生まれるんだって、点と点がつながるんです。それがとても面白くって。音楽は短い時間で人の心を動かせる数少ないコンテンツです。素晴らしい作品が生まれる瞬間に立ち会い、世界に届けられるのは、本当に魅力的な仕事だと思います」
アーティストの作品づくりを最大限サポートするために、アーティストを含め多くの人たちとの日々のコミュニケーションもA&Rの大切な仕事です。
新しいチャレンジが続く日々の中で、さまざまなモノ・コト・ヒトに対して好奇心を持ち続けること――それがA&Rに求められる素質の一つなのかもしれません。